森優貴 新作来月東京で 独から問う「死の島」
独レーゲンスブルク歌劇場で舞踊芸術監督を務める森優貴(ゆうき)の新作「死の島 Die Toteninsel」が4月8日、東京で初演される。古巣である貞松・浜田バレエ団(神戸市)のため、ラフマニノフの同名交響詩に振り付けた。「曲がはらむ底知れぬ闇とひたひた迫る不安は、現代の閉塞(へいそく)感に通じるのでは」と森。
元祖「死の島」は19世紀末、ドイツで一世を風靡(ふうび)したベックリンの象徴画だ。絶壁に囲まれた島へ向かう小舟、白装束の船頭……。この絵に触発されて曲が生まれ、さらに日本の舞台で「肉付け」がされることになった。「舟は運命に吸い込まれるのか、あるいは引き返せるのか。考えるのではなく、感じていただければ」と森は話す。
独ハンブルク・バレエ学校への留学を機に創作の才を開花させ、欧州の公立劇場で初の日本人監督になって5年。ダンスの最先端を行くドイツで、その音楽性と構成力が高く評価されている。昨年は、ベジャールの振り付けが絶対化したラベルの「ボレロ」にジョン・アダムズのミニマル・ミュージックを取り合わせ、「20世紀の名曲が21世紀に占める位置を明示した。ベジャール以来の才能」と激賞された。「街の象徴としての劇場を背負いつつ、『今』という時代と向き合う」多忙な日々だ。
「死の島」初演は、合同公演「NHKバレエの饗宴(きょうえん)」(NHKホール)で。瀬島五月ら精鋭5人が、心理のあやを描き出す。オーケストラの豊かな響きを浴びての新作誕生に、ぜひ立ち会いたい。他に井上バレエ団の「ナポリ」など、古典3作を上演。問い合わせは03・5790・6438。この舞台は5月21日午後9時から、NHKEテレ「クラシック音楽館」で放送される予定。【斉藤希史子】